公開日

タトゥーデザインのパクリを防ぐ下絵の送り方と、確定した版の残し方

3回目の修正でようやく仕上がった下絵を送った翌日、お客様からの返信が止まる。数か月後、ほぼ同じ図案が別の店のInstagramに上がっているのを見つける。下絵を事前に送るのをためらうタトゥーアーティストがいるのは、こういう話を一度は耳にしているからです。

机の上に鉛筆で描いた線画が置かれ、その横のスマートフォンに同じ線画の写真が映っている。画面全体に斜めの半透明の透かし模様が入っている

下絵が外に出ていく経路

タトゥーデザインのパクリは、悪意のある持ち逃げだけで起きるわけではありません。お客様にとっては何気ない行動が、きっかけになることもあります。

  • 友人や家族に見せようとスクリーンショットを撮り、LINEのグループに流す。
  • 料金を比べるために、別の店へ画像ごと見積もりを頼む。
  • 見積もりを頼まれた店が、それを「持ち込みデザイン」として受けて彫る。
  • お客様が「これを入れる予定」とSNSに載せ、知らない人が保存する。

日本では、お客様が自分で用意した図案を持ち込む「持ち込みデザイン」は珍しくありません。持ち込まれた画像が誰の下絵なのか、受ける側には見分けがつかないこともあります。2つ目と3つ目がつながってしまうのは、このためです。

描き始める前に予約金を受け取る

何時間もかけて下絵を描いてから予約金の話をすると、断られたときに残るのは描いた時間だけです。日程と料金が決まった時点で予約金を受け取り、それから描き始めます。金額の決め方はタトゥー予約金の相場と決め方に、キャンセル時の返金規定の文例は予約金の受け取りページにあります。

下絵の途中でキャンセルされても予約金は返さない、と決める場合は金額にも気を配ります。消費者契約法第9条第1項第1号は、キャンセルの違約金のうち、同じ種類の契約で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としています。描く時間に見合う額かどうかを、一度書き出しておくと説明しやすくなります。

修正の回数と期限も、予約金と一緒に文章にしておきます。デザインの変更がいつまでできるのかは、お客様の側も気にしているところです。たとえば「修正は2回まで、デザインの変更は施術の3日前まで」と決めて、予約の前に伝えておきます。修正の往復を減らしたいなら、最初に依頼の中身をそろえるタトゥー依頼概要テンプレートも役に立ちます。

送り方ごとに残る弱いところ

下絵を守る方法はいくつかあって、どれも何かと引き換えです。

下絵の見せ方と、それぞれの弱いところ
見せ方防げること弱いところ
店で直接見せるだけ画像そのものが外に出ない遠方のお客様は来店が必要。帰ったあとで細部を思い出せず、修正の話がしにくい
小さく粗い画像を送るそのまま転写されにくい線の細部が見えないまま確定し、当日に「思っていたのと違う」が起きやすい
隅に店名の透かしを入れるどの店の絵かがわかる隅の透かしは切り取れば消える
当日まで見せない事前に流出しない当日の修正で時間が押す。中身を見られないまま予約することに不安を持つお客様もいる
お客様の名前入りの透かしを全体に入れる誰に送った画像かがわかり、気軽に転送されにくいスクリーンショットそのものは防げない

予約の前に下絵を見ておきたいお客様に、何も見せないまま予約金を払ってもらうのは簡単ではありません。送らずに守るより、送ったうえで誰に渡した画像かがわかるようにしておくほうが、お客様にも説明しやすくなります。

透かしには店名より、お客様の名前を入れる

隅に小さく入れた店名は、トリミングひとつで消えます。お客様の名前が絵の上に斜めに重なっていると、話が変わります。自分の名前が入った画像を人に回すのは、誰でも少しためらうもの。別の店が受け取っても、ほかの人のために描かれた絵だとひと目でわかります。

入れる位置は主線の上を斜めに横切るところで、半透明にして繰り返します。手作業でやると、お客様ごとに名前を変えて書き出し直す手間がかかり、版を重ねるたびにその作業も増えていきます。

OpenInk Studioの相談画面で開いた「デザインを送る」。下絵の画像が2枚、メモ欄、透かしの説明があり、「一度だけ表示」がオンになっている

お客様が決めた版を、当日の基準にする

お客様の画面には「この版に決める」と「修正を依頼する」のボタンがあり、押した日時がアーティスト側に残ります。相談の画面では、送った版ごとに「お客様はまだ見ていません」「閲覧済み」「承認済み」「修正依頼あり」「新しい版を送信済み」のどれかが表示されます。

手に持ったスマートフォンに下絵が表示され、店名とお客様の名前の透かしが入っている。下に「この版に決める」と「修正を依頼する」のボタンがある。背景はベージュの紙の質感とタトゥーの線画

当日は、承認済みの版から転写用の線を起こします。施術の直前に「やっぱり前の版の葉の形がいい」と言われたら、記録を開いて、どの版をいつ決めたかを一緒に見ます。言った言わないの話にはなりません。変える場合も、何を変えたかが次の版として残ります。

同意書にも、確定した版と日付を書く欄を入れておきます。テンプレートはタトゥー同意書の書き方に載せました。施術の前に、相談の画面で承認済みになっている版と同意書に書いた版が同じかを見ておけば、転写を始めてから食い違いに気づくこともありません。

タトゥーデザインのパクリを見つけたとき

まずは記録をそろえます。描いた日付がわかる下絵のデータ、送った版、お客様とのやり取り、相手の投稿のスクリーンショット。相手の店に連絡するにしても、専門家に相談するにしても、ここが出発点です。

反対の立場にも線を引いておきます。持ち込みデザインを受けるときは、誰が描いた絵なのかをお客様に聞き、ほかのアーティストの作品はそのまま彫らないと店のルールに書いておきます。そうしておけば、自分の下絵を守ってほしいと言うときにも筋が通ります。

ほかの記事